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「科学者が書いたもの」の中から「理科ハウスの独断」で「本文の一部」を紹介します。

おまけとして解説をつけてみました。科学者がちょっとでも近い存在に感じていただけたらうれしいです。

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第九回

『怠け数学者の記』 プリンストンだより P262、267、271

小平邦彦/著

岩波現代文庫 2000年発行


P262

11月21日

 今僕の今度の大発見の最後の一コマが完成しつつある所。これが出来れば、今までの僕の論文の中で一番のケッ作になる筈です(おかしなことに、英語は一寸も進歩しないのに漢字を少し忘れました。変な所に仮名を使うのはそのためです)。


P267

 12月19日

・・・・・朝永先生は二、三日前からニューヨークへ行って歯を直しています。今日来た葉書によると先生歯を全部引っこ抜かれて八十歳位の顔になったそうです。明日ニューヨークへ行って八十歳オジイサンの朝永先生とシカゴで世話になった学生ギャフネイ氏と三人でお昼を食べる積りです。


P271

 1月4日

・・・・・お雑煮のない筈のお正月が、日本でも仲々食べられないような日本料理を御馳走になって、流石世界一のニューヨークなる哉と大いに感心しました。しかし、あまり食べ過ぎと飲み過ぎで朝永先生は風邪をひいてお腹を悪くしてしょげています。僕は余り飲まなかったから何ともないけれど。この前書いたかも知れないけれど、朝永先生は歯を全部引っこ抜いて総入歯を入れて、すっかり若くなりました。アメリカ製の歯を入れると日本語が下手になって英語がうまくなるから不思議です。


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解説 森裕美子


これは、小平邦彦がアメリカのプリンストン高等研究所で研究してたとき、単身赴任やったから妻に宛てた日記や。

戦後から4年しか経ってない1949年のことやで。

小平は数学のノーベル賞と言われているフィールズ賞という、ものすごい賞を受賞している数学者。

大学では数学科を出た後に、さらに物理学科も出て、そのあと数学博士になったんや。

小平の専門は複素多様体(説明してみよと思て調べたけどわからん日本語やった)。

ユークリッド幾何学とはちょっと違うけど、宇宙の形とかにもめちゃくちゃ関係ある新しい考え方の「図形」みたいなもんかな。


日記には、なんか「朝永先生」が何回も登場するねん。

(朝永振一郎については「おもしろ科学史エピソード」第五回を読んでみて)

二人は同じ家の2階の別の部屋に下宿してたから、しょっちゅういっしょにおったんやな。

小平は「朝永先生」を観察するのが楽しそうや。

笑いのネタにしてるやん。

朝永は1906年生まれやから40歳代で総入歯になってしもたんか。

かわいそうやな。


それからこの年は湯川秀樹がノーベル賞もろた年やねん。

湯川もこのとき同じプリンストン高等研究所の客員教授やったから、二人で湯川の家に行ってお祝いしたりしてる。

みんな仲よーて楽しそうやわ。


小平の日常で私が驚いたんは「毎日十二時間寝ます」と書いてあることや。

これはほんまにびっくりやで。

みんなも小平に見習って、もっとたくさん寝たほうがええでー。


2021年10月17日


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第八回

『力と物質』 P9

マイケル・ファラデー/著

稲沼瑞穂/著

岩波文庫 1949年発行


P9

 私は、あなたがたのクリスマス休みの予定をたいへん狂わしたのではないかと考えて、ひじょうに申しわけなく存じております。私はお約束したことをその通りに実行したいと願っていたのではありますが、とかくこのようなことはすべて、私たち自身の思うようにはまいらないものであります。そのときの定められた情況によっては、どうしてもそれにしたがうよりほかはないことがあります。

 私は今日は、とにかくできるだけをつくしてみますが、少ししかお話ができないかもしれませんので、その点はどうぞお許し下さるようねがいます。その代り、私ができるだけ十分にいい表わしたいと思う意味については、実験による説明をいたしましょう。もし今日の講演が終わったとき、次の週間には私のチカラがもっと回復してくることを考えに入れながら、この講演をつづける方がよいということが、みなさんによってみとめられましたならば、もちろんみなさんの意見にしたがって、この話のつづきを進めて行くか、または別の話にうつるか、どちらでもあなたがたが適当とお思いになる順序にしたがってやって行きたいと思います。今日は、私は病気―といって単にカゼなのですがーのためにどうも少し弱ってはおります。


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解説 森裕美子


このとき、ファラデーは68歳。

そりゃあ風邪ひいたらしゃべるのはつらいで。

これは1859年にファラデーが実演したクリスマスレクチャーの冒頭の部分や。

この次の年のクリスマスレクチャーが、かの有名な『ロウソクの科学』の講演ですわ。


おもしろい講演やったから、これを本にしたら売れるやろなあ、と考えたのは「序文」を書いてるウィリアム・クルックス(真空放電のクルックス管で有名や)。

今みたいに録音機はなかったから、記録を速記する人を雇ったんかなあ。

この記録は臨場感ある。

ファラデーのていねいな言い訳まできちっと書いてはる。


ファラデーは化学者でもあったし、電磁気学でもぎょーさんの発見をしてる。

この講演のお話のテーマは「力」やねん。

今でゆうたらエネルギーのことかなあ。


化学エネルギーが熱エネルギーに変わったり、電気エネルギーに変わったりするやろ、

逆もあるでー、ほらなーって、次々実験して見せてくれるねん。

ファラデー自身も実験ショー見て、科学の道に進んだ人やったからやりがいを感じてたんやろなあ。


実験内容は、どれも当時では最先端のレベルやったはずや。

そやけど、今では、この本に出てくる実験と似たような実験を学校や科学館でやってたりするで。

この本があるからお手本になるしな。

理科ハウスでも毎年12月には、『ロウソクの科学』の実験をやってんねん。

人気あるで。

これもファラデーさんのおかげやな。ありがとうな、ファラデー。


2021年10月10日


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第七回

『生命とは何か』 P17

エルヴィン・シュレーディンガー/著

岡 小天・鎮目恭夫/訳

岩波文庫 2008年発行

P17

 この「きまじめな物理学者の考え方」を進めてゆくうまい方法が一つあります。それは、風変わりな、人をばかにしたような疑問、「原子はなぜそんなに小さいのか?」から出発することです。そもそも、原子というものは実際まったく小さなものです。われわれが日常生活で取り扱うものは、どんな小さな一片の物質でも、とほうもなく多数の原子を含んでいます。このことを人々にピンとわからせるために、いろいろな説明の仕方が今までに工夫されてきましたが、ケルヴィン卿の次のようなたとえほど印象的なものはないでしょう。いま仮に、コップ一杯の水の分子にすべて目印をつけることができたとします。次にこのコップの中の水を海に注ぎ、海を十分にかきまわして、この目印のついた分子が七つの海にくまなく一様にゆきわたるようにしたとします。もし、そこで海の中のお好みの場所から水をコップ一杯汲んだとすると、その中には目印をつけた分子が約100個みつかるはずです。


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解説 森裕美子


コップ一杯の水の話はいままでに何回か聞いたことあったんや。

これな、誰が最初に言いはったんか、知りたかってん。

ケルビン卿(ウィリアム・トムソン)やってんなあ。

絶対温度の単位になってるケルビンやで。


これ、ほんまにそうなるんか、計算してみたなる。

ケルビンが言うてるからまちがいないで、と思うのはあかん。

科学者かてまちがえることあるしな。


ほんで、私の計算の答えは770個くらいやった。

「100個みつかる」やから、まあ、まちごうてないわ。

けど、答えが100個としても1000個としても水の一滴にも到底たらんけどな。


理科ハウスでは、こんなふうに研究者もやったんやろうなと思う計算を、みんなでやってみたりしてんねん。

ちょっとだけ科学者に近づけた気がしてええと思いますわ。

もちろん、計算が簡単なときだけやけど。


この本は量子力学で超有名なシュレーディンガーが書いたんやけど、物理学者が生物学の本を書くってめずらしいやん。

本人もまえがきで、掟やぶりやけど許してちょ、て書いてるねん。

けど、ワトソンとクリック(この二人はDNAの二重らせん構造を見つけた)は、この本にめちゃくちゃ影響されたんやって。

もし、読んでなかったらDNAの研究はせーへんかったかも。


そやから、掟やぶりでも書いてくれてよかったやん。

日本の科学者もこの本に影響されてたっていうから、もう名著とゆうてもええんちゃう。

シュレーディンガーが分子生物学への扉をあけた、とゆうこっちゃ。

薄い本やから、飛ばし飛ばし読めば誰でも読めますわ。


2021年10月3日


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第六回

『第三冬の華』 P86「寺田先生の追憶」から

中谷宇吉郎/著

甲鳥書林 1941年発行


P86

 先生はどんな人でも憎んだり、避けたりされるようなことはなかった。沢山の学生の中には、随分気障な男や、内攻的な打算家などもあって、私たち仲間ではいやな奴となっていた男でも、先生はよく親身になって面倒を見て居られた。もっとも時々癇癪を起こされることもあったが、その後ではいつも「今の若い連中には、無限に気を長く持たなければならないようだ。それぞれ長所はあるんだが」と言って居られた。

 そういう気持ちの先生でも、矢張り憎悪に近い感情を持たれた一種の人たちがあった。それは、道徳とか愛国とかいう最も神聖なことを売り物にして、それで生活の資を得ている人たちに対してであった。その頃物理の畏敬すべき先輩が恋愛事件で失脚されたことがあった。その事件をいつまでも如何にも楽しそうに蒸し返し繰り返して非難することによって、自己の道徳が堅固であることを誇示するつもりになっていた先生方が、大学の中にもあったそうである。それからこれも末期の現象の一つであったのであろうが、東京の下町などには、女髪結のような職業の人たちにいやがらせをやって生活していた自称愛国団体の下っ端の連中があった。こういう人たちの話が稀に出ることがあると、先生は妙に興奮気味の口調で「僕はああいう人たちには、どうにも我慢が出来ない」と言われた。そして「寺田君の説によると、泥棒をする男は皆善人なのだそうだ」という風に意地の悪い人たちから言われても、平気な顔をして居られた。これは推測であるが、そういう風に言われると、却って内心少し御得意のようでもあった。


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解説 森裕美子


「寺田先生」というのは、物理学者であり、俳人、随筆家の寺田寅彦。

中谷宇吉郎は寺田の弟子、雪の研究で有名やな。

別におもろないで、このエピソード。

そやけどこれは書いとかなあかん。

これはうちのファミリーヒストリーやから。

文中の「恋愛事件で失脚」したんは石原純のことやねん。


石原が歌人・原阿佐緒と不倫。

大正10年7月30日の東京朝日新聞2面にデカデカと写真入りで載ったんや。

記事の内容は事実とはけっこう違うかったみたいやけどな。

じーちゃん、真面目な性格やったから,恋愛に対しても真面目やった。

おかげで家族は大変やったみたいやけど、「大変」のほとんどは周りの目のせいや。

私も学生時代に教授陣に呼び出されて質問されて、ちょっといややった。

そのとき初めて「じーちゃん、不倫でこんなに有名なんや」と知ってん。

人の恋愛てそんなに気になるもんなんか。

そやから寺田寅彦、援護してくれてはってんなあと思たら泣けるやん。


寺田と石原は岩波の雑誌『科学』の創刊にかかわっててん。

そんでどんな紙にするん? てなったときに、

石原が推してた紙に、「そんなツルツルなんはいややー」て寺田が言ったとか。

仲ええな。


(追記)「寺田先生の追憶」はインターネットの青空文庫で読むことができます。

似ている題で「寺田寅彦の追想」もあるのでご注意ください。

2021年9月26日


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第五回

『科学者の自由な楽園』 P30、P138

朝永振一郎/著

江沢洋/編

岩波文庫 2000年発行


P30

 「繰り込み」理論の話が出ましたから、ちょっと、私は「くりこみ」とひらがなで書く習慣があるんですが、そうしたら、それを書いた校正刷りがきまして、それを見ましたら、「しりごみ」になっているんです。「しりごみ理論」と。つまんないことを申し上げて・・・・・。


P158

 中学五年生のとき、有名なアインシュタインが来日した。何もわからぬのにジャーナリズムはいろいろと書きたて、なまいきな中学生もそれに刺激されて、なんにもわからぬのに石原純先生の本などを手にしたりした。時間空間の相対性、四次元の世界、非ユークリッド幾何の世界、そんな神秘的なことが、このなまいきな中学生を魅了した。物理学というものは何と不思議な世界を持っていることよ、こういう世界のことを研究する学問はどんなにすばらしいものであろうかと思われた。


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解説 森裕美子


しりごみ理論は笑えた。

朝永振一郎は「くりこみ理論」でノーベル賞もらいはった理論物理学者。

そんなすごい理論をこんなエピソードにできるって太っ腹すぎるやん。

「くりこみ理論」は難しいから、私は説明でけへんで。

知りたかったら『量子力学と私』を読んだらええと思うわ。


科学者の自由な楽園、ていうのは財団法人理化学研究所のことや。

ふえるわかめちゃんの、りけん。

ビタミンAやわかめの売り上げのおかげでのんびりできたんかなあ。

月給はもらえて義務はないねんて。

令和の研究者が聞いたら、うらやましすぎて泣いてまうわ。


この本にはノーベル賞の受賞式のこととか、訪英旅行のこととか、いっぱい笑えるエピソードがあんねんけど、話が長いからここに書くのはあきらめましたわ。

この本のエッセイや講演の記録は読みやすいで。

量子力学みたいにわけわからん理論の説明を読むときは、めちゃ疲れるけどな。


ほんで、でたー! 石原純! 

うちのじーちゃんや。

これは、理科ハウスに関係あるから書いとかなあかんエピソードやった。

ノーベル賞もらいはったあの人もこの人も、ほんでノーベル賞をもろてないぎょうさんの人に影響与えたんや。

これ、すごいことちゃうの?

けど、そんなすごい人やったって、私は40歳近くになるまで知らんかった。

孫としてどうなん?

まあ、科学史エピソード書いて挽回しますわ。

2021年9月19日


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第四回

『完訳 ファーブル昆虫記1巻~10巻』 6巻上のP85

ジャン=アンリ・ファーブル/著

奥本大三郎/訳

集英社 2008年発行(第6巻)

P85

 私は五歳か六歳であった。家が貧しいから口減らしのために、先ほども述べたとおり、私は祖父母のところに預けられたのであった。

 その人里離れた農家の、鵞鳥や仔牛や羊のなかで、私の知性の最初のかすかな光が差しはじめたのである。

 それよりまえのことは真っ暗闇のようで、私には何もわからない。私の内部から曙の光が差しはじめ、無意識の暗雲が晴れて、いつまでも消えない記憶が残るようになったとき、私は本当に生まれたのだ。

 いまも自分自身の姿がはっきり目に浮かぶ。私は粗い布の子供服を着ていた。裾を引きずっているので、裸足の踵のところは泥だらけになっていた。腰に締めた帯に紐でぶら下げたハンカチのことを覚えているが、このハンカチをよく失くしたものだ。それで、その代わりに服の袖の裏側で何でも拭いたのだった。

ある日のこと、幼い私は両手を後ろに組み、太陽に向かってさっきから考え込んでいた。まぶしい輝きが私をとらえていて、私はランプの灯りに惹きよせられた一頭のシャクガであった。私がこの燦々とした輝きを受けているのは、口で、なのか、それとも目で、なのか?

 これが、芽生えはじめた私の科学的好奇心から出された問題なのであった。読者よ、笑わないでいただきたい。未来の観察者はもうすでに練習し、実験しているのである。私は口をあんぐりと大きく開け、目を閉じてみた。輝きは消えた。目を開いて口を閉じてみた。輝きは再び現われた。私はそれを繰り返してみた。結果は同じである。

これで決まりだ。つまり、私は“自分の目で太陽を見る”ということをはっきりと知ったのである。ああ! なんと凄い発見だろう! その夜、私は家じゅうのものにその話をした。祖母は私の無邪気さに優しくほほえんでくれた。ほかのものたちは馬鹿にして笑った。世間というのはこんなものである。


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解説 森裕美子


今回はダーウィンが「類いまれな観察者」とゆうてたファーブルの本やで。

ファーブルは進化論には反対してたけど、二人は手紙のやりとりをしてたんやな。

英語とフランス語で大変そう。

ファーブルは、自分が虫好きなんは遺伝なんか?と祖父や祖母や親を振り返ってみたけど思いあたらん。

小さい頃を思い出して、上のエピソードを書いたんや。


なんや、最初の発見は虫とちゃうやん!

そやけど、観察力、普通やないな。

昆虫学やのうて、別の分野でも科学者になれたと思うわ。

実際、コルシカ島で物理の先生にもなってはった。


『ファーブル昆虫記』に出てくる虫の話は、観察→仮説→実験→考察がめちゃ多いねん。

とにかく実験がすごいわ。

そこまでやるかー、のレベル。

虫に詳しい人にはたまらんやろな。


私が感動したのは、91歳までの波瀾万丈の生き方やね。

子どもや自分より40歳も若い妻が先に亡くなりはったんは辛かったやろなあ。

本の訳をやりはった奥本大三郎さんは、東京都文京区千駄木にあるファーブル昆虫館(虫の詩人の館)の館長さんや。

興味がある人は、コロナ禍が落ち着いたら行ってみてくだはれ。

2021年9月12日


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第三回

『ダーウィン先生地球航海記1巻~5巻』 4巻のP174

チャールズ・ダーウィン/著

荒俣宏/訳 内田春菊/イラスト

平凡社 1995~1996年発行

P174

 泉の近くでは、なんとも興味ぶかい光景がみられた。たくさんの巨大な陸ガメたちが、あるものは頭を前方につきだしながら必死に脚をうごかして旅をつづけ、またあるものは満腹するまで水を飲んでゆっくりと帰っていくのだ。

 陸ガメは泉にたどりつくと、付近になにがいようとおかまいなく、頭を目のところまで水にしずめて、一分間に十度ほどの割合で、ごくごくと口いっぱいに水を飲む。

 住民からきいたところ、陸ガメたちは泉のあたりに三日から四日とどまったあと、低地にもどるのだという。かれらがここへやってくる頻度はまちまちである。おそらくは、ふだん生活している場所でたべているものの性質によって、水場へおもむく回数がきまるのだろう。しかしながら、この動物たちは、年間にほんの数日、雨がふる以外にまったく水気のない島でさえ、確実に生きていける。

 カエルの膀胱が、生きるのに必要な水分をたくわえる機能をはたしている事実は、ひろくみとめられていると思う。どうやらおなじことが陸ガメにもいえるらしい。なぜならば、カメたちは泉に着いた直後、膀胱がしばらく水をたくわえてふくれているのに、すこしずつその容積がちいさくなり、なかの水も純度が落ちてくるからだ。ここの住民は低地をあるいているときにのどがかわくと、この現象を参考にして、カメの膀胱がじゅうぶんにふくれている場合にそのなかの水を飲むようにしている。わたしの目前でころされた陸ガメの場合、なかの水はすきとおっていて、かすかに苦い味がするだけだった。しかし住民たちはさいしょに頭骸骨膜のなかにある水を飲む。これが最良なのだそうだ。


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解説 森裕美子


飲んだんかい!

ダーウィン、ワイルドやん。

まあ、そのくらいのことはなんでもあらへん。

そやないとこんな大冒険はでけへんな。

この航海はダーウィンの人生を変えたんや。

かの有名な『種の起源』はこの経験が元になってるからなあ。

上に登場する陸ガメはもちろん、ガラパゴスゾウガメのことでっせ。


ダーウィンは動物や植物や生き物のことはよー知ってるんやろなー、くらいはなんとなくわかるやん。

けど、もっと詳しいのは地形とか地層、化石とかやってん。

そらそやな。

もう死んでしもた生き物は化石になってんねん。

地面の中のこともぎょーさん知ってんとあかんやろ。進化論やから。


この全5巻の本の中身は全部がエピソードやねん。

エピソードだらけの本。

ほんで、ダーウィンを一番驚かせたんは、フエゴ島に住んでた「フエゴ人」。

うちらと違う文明を持ってたフエゴ人。

文明の進化についても書いてるで。

すべての人が平等にあつかわれている社会では文明の発達を遅らせる、てゆうてんねん。

フエゴ人はみんなが物を分け合うねん。

どひゃー!

これにはびっくりしてしもたなあ。

2021年9月5日


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第二回

『素粒子はおもしろい』 P14,P82

益川敏英/著

岩波ジュニア新書 2011年発行

P14

 翌日、いつもどおり、午前10時すこし前に大学に着きました。小林くんが10時ちょうどにやって来ました。「四元ではダメだという論文ではなく、六元にしたらうまくいくという論文にしよう」と提案したら、小林くんも一瞬だけ考えて「あ、そうですね」とOKの返事が来ました。それで、論文の骨子が決まったのです。

 四ページの短い論文だったので、手早い人だったら、二~三日間で書いたかもしれません。英語には「ハードワーカー」という言葉があって、「ソフトワーカー」という言葉はないそうですが、私は基本的にソフトワーカーです。一ヵ月ぐらいかかって日本語で論文をまとめ、こんどは小林くんがそれを参考にしながら、英語で論文を書きました。小林くんが思いきって削ったので、最終的には分量が半分ぐらいになっています。


P82

 私の似顔絵が饅頭に描かれた「名大饅頭」が名古屋大学の生協で売られています。私はこれはなかなかセンスのいい試みだと思っています。学生たちに「益川、かじっちゃえ。ノーベル賞なんか、食っちまえ」とハッパをかけているわけですから。

日本だけかもしれませんが、偉人の姿とか名前を書いたものに人格が宿るとして崇拝します。なにも偉い人が名前を書いたからといって、それを破ろうが燃やそうが何でもありません。夜中に藁人形に釘打ちして相手を呪い殺すというようなことがあるといわれていますが、そういう言霊の世界は科学とはあいいれません。

 もっとも、私は甘いものは嫌いなので、名大饅頭を共食いすることはありません。かじっている写真を撮らしてくれというので、かじる格好をしたことはありますが。


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解説 森裕美子


名大饅頭食べてみたい。

7月に亡くなってしもうたから、もう饅頭でしか会われへん。

こんな写真のリクエストにもこたえてくれるなんて優しい人やってんな。

益川さんは理論物理学者。

上の本は、素粒子の本やけどコラムがたーくさんあって、益川さんの人柄が、ほんま、よーわかるで。

素粒子の説明はわからんかってもええねん(文中で益川さんもそうゆうてはる)。


いっしょにノーベル賞をもろた小林誠さんの著書、『消えた反物質』も紹介しときますわ。

Bファクトリー(B中間子を作る高エネルギー加速器)の実験結果が出る前、要するにノーベル賞もらう前に書きはったんや。

この本を読んでも小林さんのことはぜんぜんわからん。まじめな本や。益川さんがまじめやない、というてるのとはちがうで。性格の違い。

複素数が出てきてちょっと難しいけどな、わかるとこもあるで。


この二人が何をやったんか。

これ、ちゃんと人にわかるように言える人はなかなかおらんやろ。

そやからわかりたかってん。自分なりにな。

ほんで、理科ハウスの生解説動画「原子のなかみ」を作ったんや。

これがなかなかよーできてんねん。

二人はただのおじさんにしか見えへん人が、これ聞いたら「めちゃかっこええ科学者やん」になるねんで。

中身を見るってこういうことやんな。

2021年8月29日


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第一回

『熱き探求の日々』DNA二重らせん発見者の記録 P92-93

フランシス・クリック/著 中村桂子/訳

TBSブリタニカ 1989年発行

P92-93

今日では、DNAが何であるか知らない者はほとんどいない。たとえ知らなくとも、それが「化学的」とか、「合成」などと同じ「汚らわしい」言葉に違いあるまいぐらいのことはわかる。その中に、幸いワトソン、クリックというふたりの人物がいたという事実を覚えている人がいてはくれても、この二人を区別のできる人はあまり多くない。熱狂的なファンだと言い、あなたの書いた本は実に面白かったという人にどれだけ会ったことか。もちろん例のジムの本のことだ。しかし、こんな時にそれは私ではありませんなどと説明しないほうが良いことは、これまでの経験から身にしみてわかっている。

もっとおかしなこともある。1955年にジムがケンブリッジに戻ってきたときのことだ。ある日私は、新しくキャベンディッシュ研究所教授に就任したばかりのネビル・モットと歩きながら、

「ワトソンをご紹介します。研究所に来ていますから」というと、教授は驚いたような顔をして私をまじまじと見つめ、

「ワトソン、ワトソンって? 私は君の名前がワトソン=クリックだと思っていたよ」と言ったものだ。


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解説 森裕美子


「例のジムの本」ていうんは、ジェームズ・ワトソンが書いてベストセラーとなった『二重らせん』のことやで。

DNAの二重らせんの構造を見つけるまでのたった約2年間のできごとを、人間関係のごちゃごちゃも含めておもしろーに書いてあるん。

そやけど、これはワトソンの偏見で書いてあるから、この本が出版された後に登場人物からめっちゃクレームがあったんやて。

そしたら次に、そのクレームの中身やたくさんの証拠を追加して「二重らせん 完全版」を出したんや。

ワトソンすげぇ。

「正直ジム」って呼ばれてんねんて。


一方、クリックが書いたのが上の本やで。

おんなじ登場人物が出てくるから、この2冊を読み比べるとよろしいわ。

ここはワトソンの偏見やってんな、とかわかってしまうで。

クリックもおしゃべりで有名やってん。

ふたりはええコンビやってんな。

ずーっと後にワトソンは『DNA』という本も書いてんねん。

遺伝についてまとめた本や。DNAの研究の歴史がわかりやすいし、ヒトゲノム計画にかかわったジムが自分の宣伝もちゃんとしてるとこが正直やと思うわ。

2021年8月22日


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