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「科学者が書いたもの」の中から「理科ハウスの独断」で「本文の一部」を紹介します。

おまけとして解説をつけてみました。科学者がちょっとでも近い存在に感じていただけたらうれしいです。

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第五回

『科学者の自由な楽園』 P30、P138

朝永振一郎/著

江沢洋/編

岩波文庫 2000年発行

P30

 「繰り込み」理論の話が出ましたから、ちょっと、私は「くりこみ」とひらがなで書く習慣があるんですが、そうしたら、それを書いた校正刷りがきまして、それを見ましたら、「しりごみ」になっているんです。「しりごみ理論」と。つまんないことを申し上げて・・・・・。


P158

 中学五年生のとき、有名なアインシュタインが来日した。何もわからぬのにジャーナリズムはいろいろと書きたて、なまいきな中学生もそれに刺激されて、なんにもわからぬのに石原純先生の本などを手にしたりした。時間空間の相対性、四次元の世界、非ユークリッド幾何の世界、そんな神秘的なことが、このなまいきな中学生を魅了した。物理学というものは何と不思議な世界を持っていることよ、こういう世界のことを研究する学問はどんなにすばらしいものであろうかと思われた。


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解説 森裕美子


しりごみ理論は笑えた。

朝永振一郎は「くりこみ理論」でノーベル賞もらいはった理論物理学者。

そんなすごい理論をこんなエピソードにできるって太っ腹すぎるやん。

「くりこみ理論」は難しいから、私は説明でけへんで。

知りたかったら『量子力学と私』を読んだらええと思うわ。


科学者の自由な楽園、ていうのは財団法人理化学研究所のことや。

ふえるわかめちゃんの、りけん。

ビタミンAやわかめの売り上げのおかげでのんびりできたんかなあ。

月給はもらえて義務はないねんて。

令和の研究者が聞いたら、うらやましすぎて泣いてまうわ。


この本にはノーベル賞の受賞式のこととか、訪英旅行のこととか、いっぱい笑えるエピソードがあんねんけど、話が長いからここに書くのはあきらめましたわ。

この本のエッセイや講演の記録は読みやすいで。

量子力学みたいにわけわからん理論の説明を読むときは、めちゃ疲れるけどな。


ほんで、でたー! 石原純! 

うちのじーちゃんや。

これは、理科ハウスに関係あるから書いとかなあかんエピソードやった。

ノーベル賞もらいはったあの人もこの人も、ほんでノーベル賞をもろてないぎょうさんの人に影響与えたんや。

これ、すごいことちゃうの?

けど、そんなすごい人やったって、私は40歳近くになるまで知らんかった。

孫としてどうなん?

まあ、科学史エピソード書いて挽回しますわ。

2021年9月19日


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第四回

『完訳 ファーブル昆虫記1巻~10巻』 6巻上のP85

ジャン=アンリ・ファーブル/著

奥本大三郎/訳

集英社 2008年発行(第6巻)

P85

 私は五歳か六歳であった。家が貧しいから口減らしのために、先ほども述べたとおり、私は祖父母のところに預けられたのであった。

 その人里離れた農家の、鵞鳥や仔牛や羊のなかで、私の知性の最初のかすかな光が差しはじめたのである。

 それよりまえのことは真っ暗闇のようで、私には何もわからない。私の内部から曙の光が差しはじめ、無意識の暗雲が晴れて、いつまでも消えない記憶が残るようになったとき、私は本当に生まれたのだ。

 いまも自分自身の姿がはっきり目に浮かぶ。私は粗い布の子供服を着ていた。裾を引きずっているので、裸足の踵のところは泥だらけになっていた。腰に締めた帯に紐でぶら下げたハンカチのことを覚えているが、このハンカチをよく失くしたものだ。それで、その代わりに服の袖の裏側で何でも拭いたのだった。

ある日のこと、幼い私は両手を後ろに組み、太陽に向かってさっきから考え込んでいた。まぶしい輝きが私をとらえていて、私はランプの灯りに惹きよせられた一頭のシャクガであった。私がこの燦々とした輝きを受けているのは、口で、なのか、それとも目で、なのか?

 これが、芽生えはじめた私の科学的好奇心から出された問題なのであった。読者よ、笑わないでいただきたい。未来の観察者はもうすでに練習し、実験しているのである。私は口をあんぐりと大きく開け、目を閉じてみた。輝きは消えた。目を開いて口を閉じてみた。輝きは再び現われた。私はそれを繰り返してみた。結果は同じである。

これで決まりだ。つまり、私は“自分の目で太陽を見る”ということをはっきりと知ったのである。ああ! なんと凄い発見だろう! その夜、私は家じゅうのものにその話をした。祖母は私の無邪気さに優しくほほえんでくれた。ほかのものたちは馬鹿にして笑った。世間というのはこんなものである。


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解説 森裕美子


今回はダーウィンが「類いまれな観察者」とゆうてたファーブルの本やで。

ファーブルは進化論には反対してたけど、二人は手紙のやりとりをしてたんやな。

英語とフランス語で大変そう。

ファーブルは、自分が虫好きなんは遺伝なんか?と祖父や祖母や親を振り返ってみたけど思いあたらん。

小さい頃を思い出して、上のエピソードを書いたんや。


なんや、最初の発見は虫とちゃうやん!

そやけど、観察力、普通やないな。

昆虫学やのうて、別の分野でも科学者になれたと思うわ。

実際、コルシカ島で物理の先生にもなってはった。


『ファーブル昆虫記』に出てくる虫の話は、観察→仮説→実験→考察がめちゃ多いねん。

とにかく実験がすごいわ。

そこまでやるかー、のレベル。

虫に詳しい人にはたまらんやろな。


私が感動したのは、91歳までの波瀾万丈の生き方やね。

子どもや自分より40歳も若い妻が先に亡くなりはったんは辛かったやろなあ。

本の訳をやりはった奥本大三郎さんは、東京都文京区千駄木にあるファーブル昆虫館(虫の詩人の館)の館長さんや。

興味がある人は、コロナ禍が落ち着いたら行ってみてくだはれ。

2021年9月12日


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第三回

『ダーウィン先生地球航海記1巻~5巻』 4巻のP174

チャールズ・ダーウィン/著

荒俣宏/訳 内田春菊/イラスト

平凡社 1995~1996年発行

P174

 泉の近くでは、なんとも興味ぶかい光景がみられた。たくさんの巨大な陸ガメたちが、あるものは頭を前方につきだしながら必死に脚をうごかして旅をつづけ、またあるものは満腹するまで水を飲んでゆっくりと帰っていくのだ。

 陸ガメは泉にたどりつくと、付近になにがいようとおかまいなく、頭を目のところまで水にしずめて、一分間に十度ほどの割合で、ごくごくと口いっぱいに水を飲む。

 住民からきいたところ、陸ガメたちは泉のあたりに三日から四日とどまったあと、低地にもどるのだという。かれらがここへやってくる頻度はまちまちである。おそらくは、ふだん生活している場所でたべているものの性質によって、水場へおもむく回数がきまるのだろう。しかしながら、この動物たちは、年間にほんの数日、雨がふる以外にまったく水気のない島でさえ、確実に生きていける。

 カエルの膀胱が、生きるのに必要な水分をたくわえる機能をはたしている事実は、ひろくみとめられていると思う。どうやらおなじことが陸ガメにもいえるらしい。なぜならば、カメたちは泉に着いた直後、膀胱がしばらく水をたくわえてふくれているのに、すこしずつその容積がちいさくなり、なかの水も純度が落ちてくるからだ。ここの住民は低地をあるいているときにのどがかわくと、この現象を参考にして、カメの膀胱がじゅうぶんにふくれている場合にそのなかの水を飲むようにしている。わたしの目前でころされた陸ガメの場合、なかの水はすきとおっていて、かすかに苦い味がするだけだった。しかし住民たちはさいしょに頭骸骨膜のなかにある水を飲む。これが最良なのだそうだ。


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解説 森裕美子


飲んだんかい!

ダーウィン、ワイルドやん。

まあ、そのくらいのことはなんでもあらへん。

そやないとこんな大冒険はでけへんな。

この航海はダーウィンの人生を変えたんや。

かの有名な『種の起源』はこの経験が元になってるからなあ。

上に登場する陸ガメはもちろん、ガラパゴスゾウガメのことでっせ。


ダーウィンは動物や植物や生き物のことはよー知ってるんやろなー、くらいはなんとなくわかるやん。

けど、もっと詳しいのは地形とか地層、化石とかやってん。

そらそやな。

もう死んでしもた生き物は化石になってんねん。

地面の中のこともぎょーさん知ってんとあかんやろ。進化論やから。


この全5巻の本の中身は全部がエピソードやねん。

エピソードだらけの本。

ほんで、ダーウィンを一番驚かせたんは、フエゴ島に住んでた「フエゴ人」。

うちらと違う文明を持ってたフエゴ人。

文明の進化についても書いてるで。

すべての人が平等にあつかわれている社会では文明の発達を遅らせる、てゆうてんねん。

フエゴ人はみんなが物を分け合うねん。

どひゃー!

これにはびっくりしてしもたなあ。

2021年9月5日


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第二回

『素粒子はおもしろい』 P14,P82

益川敏英/著

岩波ジュニア新書 2011年発行

P14

 翌日、いつもどおり、午前10時すこし前に大学に着きました。小林くんが10時ちょうどにやって来ました。「四元ではダメだという論文ではなく、六元にしたらうまくいくという論文にしよう」と提案したら、小林くんも一瞬だけ考えて「あ、そうですね」とOKの返事が来ました。それで、論文の骨子が決まったのです。

 四ページの短い論文だったので、手早い人だったら、二~三日間で書いたかもしれません。英語には「ハードワーカー」という言葉があって、「ソフトワーカー」という言葉はないそうですが、私は基本的にソフトワーカーです。一ヵ月ぐらいかかって日本語で論文をまとめ、こんどは小林くんがそれを参考にしながら、英語で論文を書きました。小林くんが思いきって削ったので、最終的には分量が半分ぐらいになっています。


P82

 私の似顔絵が饅頭に描かれた「名大饅頭」が名古屋大学の生協で売られています。私はこれはなかなかセンスのいい試みだと思っています。学生たちに「益川、かじっちゃえ。ノーベル賞なんか、食っちまえ」とハッパをかけているわけですから。

日本だけかもしれませんが、偉人の姿とか名前を書いたものに人格が宿るとして崇拝します。なにも偉い人が名前を書いたからといって、それを破ろうが燃やそうが何でもありません。夜中に藁人形に釘打ちして相手を呪い殺すというようなことがあるといわれていますが、そういう言霊の世界は科学とはあいいれません。

 もっとも、私は甘いものは嫌いなので、名大饅頭を共食いすることはありません。かじっている写真を撮らしてくれというので、かじる格好をしたことはありますが。


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解説 森裕美子


名大饅頭食べてみたい。

7月に亡くなってしもうたから、もう饅頭でしか会われへん。

こんな写真のリクエストにもこたえてくれるなんて優しい人やってんな。

益川さんは理論物理学者。

上の本は、素粒子の本やけどコラムがたーくさんあって、益川さんの人柄が、ほんま、よーわかるで。

素粒子の説明はわからんかってもええねん(文中で益川さんもそうゆうてはる)。


いっしょにノーベル賞をもろた小林誠さんの著書、『消えた反物質』も紹介しときますわ。

Bファクトリー(B中間子を作る高エネルギー加速器)の実験結果が出る前、要するにノーベル賞もらう前に書きはったんや。

この本を読んでも小林さんのことはぜんぜんわからん。まじめな本や。益川さんがまじめやない、というてるのとはちがうで。性格の違い。

複素数が出てきてちょっと難しいけどな、わかるとこもあるで。


この二人が何をやったんか。

これ、ちゃんと人にわかるように言える人はなかなかおらんやろ。

そやからわかりたかってん。自分なりにな。

ほんで、理科ハウスの生解説動画「原子のなかみ」を作ったんや。

これがなかなかよーできてんねん。

二人はただのおじさんにしか見えへん人が、これ聞いたら「めちゃかっこええ科学者やん」になるねんで。

中身を見るってこういうことやんな。

2021年8月29日


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第一回

『熱き探求の日々』DNA二重らせん発見者の記録 P92-93

フランシス・クリック/著 中村桂子/訳

TBSブリタニカ 1989年発行

P92-93

今日では、DNAが何であるか知らない者はほとんどいない。たとえ知らなくとも、それが「化学的」とか、「合成」などと同じ「汚らわしい」言葉に違いあるまいぐらいのことはわかる。その中に、幸いワトソン、クリックというふたりの人物がいたという事実を覚えている人がいてはくれても、この二人を区別のできる人はあまり多くない。熱狂的なファンだと言い、あなたの書いた本は実に面白かったという人にどれだけ会ったことか。もちろん例のジムの本のことだ。しかし、こんな時にそれは私ではありませんなどと説明しないほうが良いことは、これまでの経験から身にしみてわかっている。

もっとおかしなこともある。1955年にジムがケンブリッジに戻ってきたときのことだ。ある日私は、新しくキャベンディッシュ研究所教授に就任したばかりのネビル・モットと歩きながら、

「ワトソンをご紹介します。研究所に来ていますから」というと、教授は驚いたような顔をして私をまじまじと見つめ、

「ワトソン、ワトソンって? 私は君の名前がワトソン=クリックだと思っていたよ」と言ったものだ。


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解説 森裕美子


「例のジムの本」ていうんは、ジェームズ・ワトソンが書いてベストセラーとなった『二重らせん』のことやで。

DNAの二重らせんの構造を見つけるまでのたった約2年間のできごとを、人間関係のごちゃごちゃも含めておもしろーに書いてあるん。

そやけど、これはワトソンの偏見で書いてあるから、この本が出版された後に登場人物からめっちゃクレームがあったんやて。

そしたら次に、そのクレームの中身やたくさんの証拠を追加して「二重らせん 完全版」を出したんや。

ワトソンすげぇ。

「正直ジム」って呼ばれてんねんて。


一方、クリックが書いたのが上の本やで。

おんなじ登場人物が出てくるから、この2冊を読み比べるとよろしいわ。

ここはワトソンの偏見やってんな、とかわかってしまうで。

クリックもおしゃべりで有名やってん。

ふたりはええコンビやってんな。

ずーっと後にワトソンは『DNA』という本も書いてんねん。

遺伝についてまとめた本や。DNAの研究の歴史がわかりやすいし、ヒトゲノム計画にかかわったジムが自分の宣伝もちゃんとしてるとこが正直やと思うわ。

2021年8月22日


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